現在ファーストアセント株式会社にて、子育てをサポートするアプリ「パパッと育児@赤ちゃん手帳」や赤ちゃんの泣き声から感情を解析するサービス「CryanAlyzer」など、様々なプロダクトを世に送り出していらっしゃる服部伴之さん。今回は、そんな服部さんにニーズや流行を捉える際のコツをお聞きしました!
〜今回インタビューにご協力いただいた卒業生〜
服部 伴之(はっとり ともゆき)さん
ご経歴:
1998年 株式会社東芝で研究者として従事
2001年〜 IT系ベンチャーのシステム責任者を数社歴任。企業向け情報共有サービス、懸賞メディア、マストバイキャンペーンのASPシステムなどの開発を行う。
2005年 株式会社エンターモーションにて取締役CTOに就任。モバイルCMS「MobileApps」事業の立ち上げなどを行う。
2011年 株式会社tattvaの取締役に就任。ソーシャルサービス「i.ntere.st」の立ち上げを行う。
2012年 株式会社ファーストアセントの代表取締役に就任
株式会社ファーストアセント:https://first-ascent.jp/
〜インタビュー本編〜
ー平成4年に入学されたのち、工学部マテリアル工学科へ進学されたということですが、なぜその学科を選ばれたのですか?
中学高校と陸上競技をしていたこともあり、「世界一速く走れるスパイクを作りたい!」 と考えていました。当時カール・ルイスという選手がいて、セラミックを使った斬新なスパイクを採用しており、セラミックなどの材料を学ぶために材料工学科(元マテリアル工学科)を選びました。ですが、実際には材料より構造が重要だったのでチョイスとしては正解ではなかったかもしれませんね…
ー学部ご卒業後に東芝へ入社された後も、違和感を感じていらっしゃったとか。
そうですね、いろいろな物を作りたいと思って、総合電機メーカーを選んだのですが、配属先で担当したものは研究から世の中に出るまでに10年近くかかるもので、「あれ?俺、一生の間に何個ものを作れるんだろう?」という状態になったんです。分社化などがあって、採用時に見えていたキャリアパスが大きく変わってしまったのです。
ーそして入社3年目にして、ソフト開発に舵を切ることを決意されたということですね。ベンチャーITに大きく方向転換される際に、不安はなかったのでしょうか?
大企業に長く勤めるつもりはなく、ベンチャーへの転身自体は考えていました。とはいえ、 当時私が考えていたベンチャーは、今私がやっている会社よりも大規模な会社をイメージしていましたが。 あとは私達の新卒の時代は、これからの時代は何か一つのことに秀でている「T型人間」よりも、二つ以上の専門性を持ち、それらを掛け合わせることができる「π型人間」であるべきだと言われていました。そういったことから新しいことを始めること、今まで積み上げてきたものから離れることに対して抵抗はなかった。というかチャンスだと思うようになっていたので、特に不安はなかったです。現在手掛けているビジネスも、子育てを科学するという当時誰も行っていない領域だったし、未来の成長産業だと思ったので突入しました。
ーなるほど。メジャーな市場では勝負が難しくとも、様々な分野の知見を活かしてニッチな市場を見つけ、オンリーワンを目指すということですね!そういったニーズや今後の成長産業を見極める力はどのように身に付けられたのですか?
こうした視点を持つようになったのは、IT業界に入ってからです。多様な業種の人々と会っ て話を聞くうちに、彼らの悩みやニーズに共通点があることに気付きました。同じ業界に長 く勤めているとこうした気付きを得ることが難しくなり、何か問題や課題が生じてもそれを 解決する術を考えられなくなってしまう。逆に巨視的な視野を持って、自分で課題解決法を 考えれば、どこにアプローチするべきかが自ずとわかるようになります。問題が生じたら他人任せにするのではなく、自分でまずは手を打つ。あるいは失敗に備えて自ら対策をしてお く。「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」ってことですよ(笑)。
ーまさに、ですね(笑)。ただ、やはり方向転換をせず一つのことを極めている人々も同級 生の中には少なからずいらっしゃいますよね。ふとしたときに彼らとの違いを感じることは ありませんか?
ありますね。同級生と久しぶりに会うと、みんな老けたなって。学生時代は私が老けキャラだったんですが、今は一番若いんじゃないかって思えます(笑)。会社経営をしていると大変なことは本当に多いですが、大企業の管理職の悩みの方が精神的にすり減るのかなと思います。私達のようにダメなら他を当たるという選択肢がなく、会社内で解決しなくてはならないというケースが多いので、自分の責任で舵取りできて羨ましいとよく言われます。ただ、「俺にはそんなエネルギーないよ。」とも言われるのですが。
ー確かに服部さんはエネルギーに満ち溢れている印象です。現在も次々と新たなサービスを生み出していらっしゃいますよね。
2000年代初頭からさまざまなサービスを大企業と一緒に作ってきました。最近はデジタルトランスフォーメーション(DX)という事が叫ばれており、大企業がデータやIT技術を駆使して、サービス価値の提供の仕方を変えようと躍起です。そんな中、ベンチャーが起点になってDXが実現されている業界が出てきていることもあり、大企業側もベンチャーとタッグを組むという構図が出始めています。私が手掛けている子育てへのテクノロジーの活用も業界では先行している取り組みなので、企業から相談を受けることも多くなってきています。自分たちで子育てのDXを成し遂げて、自分の子ども世代が子育てをする時に使うサービスにしようと思い、サービス開発に取り組んでいます。
ー自分の開発したサービスを子供世代に使ってもらう…考えるとワクワクしますね!では、今後のIT業界や世界の潮流に関して、服部さんの展望をお聞かせ願います。
SDGsなど社会への貢献という考えですね。投融資にしても、社会貢献を投資の指標としているファンドが現れてきていますし、そういった視点は必須で、不可逆的なものだと思います。これから一層、考慮が必要だと感じています。
ーSDGsやESG投資などが日本企業でも定着しつつありますよね。では最後に、学生時代にやっておくべきだったと感じていらっしゃることはありますか?学生へのメッセージをぜひお願いします。
もう少し勉強しておけばよかったなと思いました(笑)。社会人になってから経済、経営などの本を読んでいますが、これって教養時代に学べたなと。あと、大学時代はサークル活動をかなりやっていたのですが、今思うとビジネスやっていた方が楽しかったんじゃないかと思ってます。学生が参加できるビジネスコンテストも多いし、それを支援している人も、今だとたくさんいますから、そういったモノに触れてみることをお薦めします。
ーありがとうございました。コロナ禍で様々な機会が失われる中、逆に今この状況だからこそできることもあります。学生の皆さんも、ぜひ逆境をチャンスに変えてやるというマインドで多様な経験を積んでいきましょう!(終)