現在株式会社コーチ・エィにて「コーチ」として活躍されている石川さん。果たしてコーチングとはどういったものなのか、またコンサルからの転身を決められた背景とは…など、ざっくばらんにお話ししていただきました。
〜今回インタビューにご協力いただいた卒業生〜
石川 詩乃(いしかわ しの)さん
ご経歴:
2001年 東京大学文学部行動文化学科卒業後、日本IBM株式会社に入社。コンサルティング・サービス部門で製造・小売・通信など、さまざまな業界の全社業務改革プロジェクトに関わる。
2017年 株式会社コーチ・エィに入社。前職での経験を活かし、幅広い業界の代表取締役からミドルマネジメント層を対象に組織理念の浸透・体現、次世代育成などをテーマにコーチングを実施。
〜インタビュー本編〜
ー石川さんは現在コーチングをお仕事にされているとのことですが、ずばりコーチングとはどういったものでしょうか?コンサルとの違いは何ですか?
コーチングと聞くと、スポーツの「コーチ」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。「コーチ」と聞いて、何かを指導する人、教える人というイメージをもつかもしれません。でも、ビジネスでいうコーチングは、組織内の限られたリソースで最大の成果を出すために、組織や人の潜在能力を最大化するためのアプローチです。コーチング・カンバセーションという対話を通じて、クライアント(コーチを受ける人)に自分の状態をどう認識しているのかを把握したうえで理想的な未来のあり方を考えてもらい、それを実現させるためのアクションを選択してもらいます。これを行うために、コーチはその対話の中でとにかく質問をたくさんする。
コンサルはソリューションを直接提供するのに対して、コーチングはソリューションを見つけるためにクライアントと一緒に探索し、成長していくというイメージですね。色々質問していった結果、顧客が必要としているものが実はコーチングではなかったという場合もあるので、そういうケースは他のアプローチをお勧めすることもあります。
問いを重ねていくことで顧客に自分がどういった人間か、リーダーかを考えるようになってもらう「リーダー開発」と、誰かと一緒により良いパフォーマンスを生み出すための「組織変革」を大事にしています。
ー決まった答えを与えるのではなく、相手が解答を見つけるのを助けるのがコーチングということですね!そういった意味でコーチングは専門スキルが必要なお仕事だと思いますが、一方で個人の経験則がかなりものを言うのではないでしょうか?
そうとも限りませんよ。最低限の社会人としての知見やコーチングの作法は必要ですが、ソリューションを提供するわけではないので、お客様の領域に関するコーチ自身の経験は必ずしも最重要視される訳ではありません。むしろあるやり方に囚われている人に新たな見方を提示するという点においては、経験が少ないからこそ柔軟で新鮮な考えが武器になることもあります。
コーチとして重要なのは、信頼できる、何でも話せると顧客に認識してもらうことですね。ただの相談役ではないので、プロフェッショナルとして相手がどんな視点で話をしているのか、どういった価値観を持っているのかを対話の中で素早く見極める力が求められます。
ーなるほど…相手の価値観を見極めるのはなかなか難しそうですね。その分やりがいは感じられそうですが、コーチングのモチベーションはどういった部分にあるのでしょうか?
コーチングはコンサルティングと比較すると、成果が表れるのに時間がかかるという側面はあるかもしれません。コーチングの成果を測定する際には、たとえば「次世代のリーダーを育てる人を増やす」という目的なら、その人の周囲にリーダーがどれくらい育ったかを確認したり、その人のリーダーシップがどれだけ伸びたかを測ったりします。ただしリーダーシップとひとくちに言っても組織ごとに求められる要素が異なるので、コーチングをスタートする前に適切な指標を設定することが必要です。こうした難しさはありますが、成果が全く見えないということはありません。
また、人って年を重ねると「自分はこういう人間なんだ、変わらないんだ」と思ってしまうものですが、人間はいくつになっても変わることができるんだとコーチングを通して感じました。その人自身が持っている価値観で行動は決まっていくので、違う価値観を採用することによってその人の意識や行動、さらには周囲の人も変わっていくことができるんです。人が自ら「変わりたい」と思って努力して、変わるその瞬間を見ることがモチベーションに繋がっています。
ー「いくつになっても人は変われる」、心強い言葉ですね。コーチングを通してこうした新鮮な経験を得られたとのことですが、そもそもなぜ前職のコンサルから転職を決意されたのですか?
実は、私は学生の頃から様々な職業に関心があって、あまり仕事を絞れなかったんです。最初に内定をもらった企業で働き始めたものの、一生やりたいほど、自分はコンサルの仕事に熱量をもてないぞ、ということに気づいたんですね。また会社が推進するITの未来を自分で描く意思と野望もなく、これは一生続けたいものではないと感じました。私はむしろ人材育成や、それによる組織の変化、働いている人々をどうもっと活き活きさせていくか、に楽しみを見出していたんです。
それから、コンサルはゴールまでの道のりを描いてやるべきステップを洗い出し、実現に向けてきっちりと支援する仕事ですが、それでもスケジュール通りにいかないことがあります。私は、プロジェクトが進まない理由はメソッドの問題ではなく、人々のコミットメントにあると思ったんです。だから、人のやる気や可能性を引き出そうと考えました。
ー確かに、完璧な計画以上に所属メンバーのモチベーションが物を言う場面は少なからずありますよね。では最後に、学生へのメッセージをお願いします。
私は学生時代、ドリームネットと襖クラブを兼任していたほか、塾講師活動に力を入れていました。ドリームネットで出会うOB/OGの方々のお話はどれも興味深くて、将来やりたいことを絞り込めないままに最初の内定先で働くことになったのですが、学生の皆さんには「じっくり悩んで、自分が時間とエネルギーを注いで正直に頑張れる仕事を選んだ方が良いよ!」と伝えたいです。もちろんこれは仕事に限らず、勉強でもサークルでもね。
ーありがとうございました。コーチングの手法は普段の生活など随所で活かせそうですね!学生の皆さんも、この機会にコーチングを学んでみると自分の新たな可能性を発見できるかもしれませんね。(終)
今回インタビューにご協力いただいた石川さんは、第30回交流会にご参加いただきました。今後の交流会にもお呼びする予定でおりますので、もっと詳しくお話を伺ってみたいという方は、ぜひ参加をご検討ください。
交流会についての詳細はこちらのページにございます。