【東大卒業生 インタビュー】 新しい食育で子どもを救う!『異才発掘プロジェクト:ROCKET』福本理恵さんが語る食の力  ←第15回語る会 食企画へご参加いただきます!!


「食育」というと、どのようなイメージが思い浮かびますか? たんぱく質の豊富な食材はこれ、1日に必要な野菜はこれくらい—学校の授業ではそんなことを教わってきたでしょうか。

第15回東大卒業生と語る会・食企画にお越しになる卒業生の1人、福本理恵さんが取り組むのは、今までとは全く違う食をツールとした教育。福本さんのお話から、食の持つ大きな力と教育の未来像が見えてきました!

※今回インタビューさせていただいた福本理恵様には5月13日(日)開催の「第15回 東大卒業生語る会 食企画」へお越しいただきます!(食企画の詳細・お申し込みはこちら

福本様 お写真

Profile

福本 理恵(ふくもとりえ)

1981年生まれ。東京大学先端科学技術研究センターの交流研究員を経て、東京大学大学院博士課程に進学。心のメカニズムを探るべく認知能力(モノの捉え方) についての研究をするも、自身の体調を崩したことをきっかけに、日々の食の重要性を再確認する。「豊かな心は、楽しい食卓から」をモットーに、「種から育てる子ども料理教室」のカリキュラム作成および運営に携わる。2014年からは東京大 学先端科学技術研究センターにて、農と食から教科を学ぶ「Life Seed Labo」を企画、2014年秋にスタートする「異才発掘プロジェクト:ROCKET」のプロジェクトリーダーとしてカリキュラム開発に携わる。
種から育てる子ども料理教室:http://kodomoseed.blogspot.jp/
Life Seed Labo:http://doit-japan.org/lifeseedlabo/
異才発掘プロジェクトROCKEThttps://rocket.tokyo/

 

食は「生きる力」を養う絶好の教材

—福本さんは現在、“学校からはみ出した”小中学生対象の教育プログラム『異才発掘プロジェクト:ROCKET』のプロジェクトリーダーとしてその運営やプログラム開発をしていらっしゃるそうですね。ROCKETのカリキュラムに含まれているという食に関する授業について、詳しく教えてください。

はい、生徒は「解剖して食す」という授業を一番最初に受けます。例えば、いろんな種類のイカとハサミ・まな板・白い食器だけ渡して、「イカスミのパエリアを作ってください」とか。

—レシピも何もなく? 生徒たちが、イカスミのパエリアってこういうのだったなっていうイメージを元にそれに近づけていくということですか。

そう。普通の家庭科の授業だったら、時間枠があって材料もレシピも盛り付け方も教えられて、そこに近づけないといけないっていうのがゴールになっちゃうけど、ROCKETではミッションをこなすことが目的ではない。目的は、自分の納得のできる一皿に仕上げるために、「技術が追いついてないからこの方法はやめてこっちのやり方にしよう」とか、予定に変更を加えながら決断と実行を繰り返すこと。

それって人生も同じです。こうしたらこういう職業に就けますよとか別にないじゃないですか。何が起こるかわからないし、アクシデントが起こった時どう捉え直して選択肢に変更を加えていくかの連続で自分のなりたいものに近づけていく。それを模した形で「解剖して食す」という授業をやってるんですよ。

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—正解に自分を近づけるのではなく、自分の価値基準の形成に目を向けた教育をしたいと思ったきっかけはありますか?

結局、お母さんたちは子育てのマニュアル本を探してしまっているし、子供もすぐに「どうしたらいいですか」って聞くような思考になっている。どうしたらいいかはあなたの人生だから、それを考えるための材料を選んでいって、選択肢を並べて、それで行こうってあなたが決断しないといけないことなのに、みんな他人に人生を委ねようとする。そこに違和感を覚えたのが始まりです。

—福本さんの運営する子ども向け料理教室Life Seed Labでも、自分の中に判断基準を養うことを重視した教育を行っていらっしゃいますね。

Life Seed Labで、オリジナルのドレッシングを作りなさいという課題を出したことがあるんです。油と水の比率など、ドレッシングを作るための基本的な知識だけ教えて、原料は自由ってすると、一気に実験が始まるの。甘み一つとっても、はちみつもあればグラニュー糖もあって、それぞれ風味が違うし、子供たちの好みも違うんです。大人っぽい甘みが好きな子もいれば、キャンディーみたいな甘みが好きな子もいる。そういう好きか嫌いかっていう感覚の違いを探ることで初めて、自分の中で基準を決めることができるんですよね。Life Seed Labではドレッシングを作るという作業を通して、子どもたちが五感に基づいた判断基準を作っていく。

そういうことだなと思って、人生って。それぞれの要素をちょっとずつ試しながら、感覚のレベルで好きだと思うことが出てくるだとか。それは実験しないと、頭で考えていても分からないことです。そういう感覚の基準ができて初めて、知識に基づいて選ぶこともできるようになるのに、今の教育ってそういう試しをまずさせてくれないんです。実験をきちんとやりながら自分の判断基準を作っていく教育ができればすごく面白いと思っています。

 

「今日のごはんおいしかった」が幸せを作る

—大学では教育学を、大学院では心理学を学ばれていたそうですね。その後食育に関わるようになった経緯を教えてください。

教育学部時代は、一斉授業をする中でクラスで浮いてる子たちがどうしても気になっちゃって。その子らはどういう家庭で育ってるんだろうとかね。一斉授業をやってると、気になっているのに置いてかないといけなくて、その状況がすごく心苦しくて。その時の思いが今関わるROCKETの活動に繋がっているんじゃないかと感じます。

大学院では一時期、自閉症の子たちを対象に研究していたんですが、そこで痛感したのは世界の見え方が本当に人によって全く違うということ。だからこそ学校の中で一律に刺激を受けても違うように反応してパニックを起こしちゃうって子がいると分かった。

そうやって、学部時代に抱いた思いに対して自分の中でなんとなく答えは出たんですが、それが世の中を変えるにはものすごく時間がかかることだなって思って。そうこうしてるうちに、目の前の人をもっと幸せにする方法って簡単にあるはずなのに。例えば一緒にご飯を食べて笑うとか、美味しかった〜って思うとかね。私もちょっと体を壊していたこともあって、食で教育を考えると自分も楽しいしダイレクトに人を幸せにできるんじゃないかと、思い切って研究から離れて食の世界に入りました。

—そこで食の道を選んだことには、ご自身のどのようなバックグラウンドが影響しているんでしょうか?

もともと料理が好きだったんです。うちの母は忙しくて帰ってくるのが遅かった。その中で、私が家族との楽しい時間を作れる仕事って料理を作ることだったんですね。それが多分じわじわ効いていて、大学を選ぶ時も食の専門学校に行きたいって言ったことがあるほど、食を使って何かしたいという思いはずっとありました。

食A

—どのような学生時代を過ごされたのか、教えていただけますか。

私不登校だったのね。中学くらいから、なんか行く意味がわからなくて。別にいじめられていたわけではないし楽しくなかったわけでもないんだけど。

だから中学の時くらいから休み癖が結構付いていて、大学も割と休んでいた気がします。じゃあ何するって言うと家で料理したりとか。でもそれって別に学んでいなかったわけではなくて、授業は受けてないけど自分で料理の実験をしたり、美味しいお店を探してなんでおいしいのか考えて自分の視点を養ったりしていた。

大学の授業はすごく高度な内容になってくるけど、高度になりすぎると地に足をつけたところまで落とせなかったりするじゃないですか。私の場合は日常生活と知識を結びつけることが好きだったし、そこが今のカリキュラム開発の仕事にもつながっている気がします。

—当時の福本さんご自身が今関わっていらっしゃる小中学生に近い感覚を持っていたのかもしれませんね。

 

食べたさがヒトを「人間」にした—無限大な食の力

—小中学生と接する中で、食の持つ役割の変化をお感じになりますか?

最近の子供達ってスマホがあるから一人でも楽しくご飯が食べられる。だけど会話が全然できないのね。みんなでご飯を食べる場面でも、静かに食べていたり、聞かれたことに対して「はい」「いいえ」とかピンポイントな会話しかできなくなっている。食事すること自体が会話を楽しく続けたり知識を交換したりする場としてあったのに、その役割が結構なくなってきていると感じています。

—コミュニケーションの場としての役割が弱まってきているんですね。ではご自身についてはどうでしょうか。特に食に携わる前後で、ご自身の食に対する考え方が変わったという感覚はありますか?

食はすべてのものをつなげるなって言う感覚がすごく強くなりましたね。教材としてだけじゃなく、人との繋がりもそう。違う業種の人と話をしても、食がベースにあると話がどんどん広がっていく。例えば「今日の天気いいですね」って言うのは、天気が人類にとって普遍的なものだからでしょ。それと同じように食も普遍的なことだから、どういう分野に行っても盛り上がるし、どこの国に行っても盛り上がる。

そもそも人って食べることで進化してきたんだなって思っているんですよ。火を起こして生食ではなく加工食を食べられるようになって、脳が肥大化していった。だから食の進化イコール技術の進化ってことだし、狩猟も協働しないとできないことだから、食べたいがために社会性は発達してきたということ。だから食って全てに関わっているなと思って。

—食の利用可能性って無限大ですよね。そこが食に携わる面白さの1つだと思うのですが、他にも福本さんの考える食に関わることの魅力があれば教えてください。

「幸せ」ですかね。

今年、ROCKETの子供たちに「最高のおぼろ昆布」を作れっていうミッションを出してるんです。そうしたら実際におぼろ昆布取りにいってみようとか、おぼろ昆布の職人さんに習ってみようとかなりますよね。そうすると「昆布とワカメってどう違うのかな」とか、「昆布ってどう取るのかな」とか、自分の知らないことをどんどん発見していって、どんどん面白くなっていく。しかもそれが自分の世界に取り入れやすいのね。最終的に「昆布ってすごい」という見方が日常に入るようになって昆布に愛着が湧いて、じゃあ今日はパックじゃなくて昆布で出汁を取ってみようかっていう生活に変わっていくと、生活自体がすごく豊かになる。

そういう面白さを気軽に手に入れられるのが食だと思います。ロボット作ろうと思っても、資金や技術がないと出来ないけど、食って全てのハードルが低い。金額的に見ても、いくら高級な肉って言っても100グラム2,000円とかだし。だから思い切ったことが出来るし、日々のちょっとした楽しみの幅を増やしながらいろんな可能性を広げてくれるっていうのが食の強みだと思いますね。

—最後に、大学生へのメッセージをお願いします!

 

まずいろんな人といろんな話をしながら、面白いと思ったことを自分で実際にやってみる。多くの大学生は実行力が足りない気がするんですよ。面白いなと思ったら「いいですね」って言うけどやりはしないのね。

「いいですね」じゃなくてやってみなよ、と。本当に何かいい考えがあった時に共感するだけじゃなくて、一歩踏み出す勇気と、その一歩を引き出す好奇心、最後までやりきる努力、その三つを大事にしながら生きていくと、自分のやりたかったこととか、共感を受けたものが自分でできるようになっていく。ぜひそのステージに踏み出してほしいなと思います。

—貴重なお話をありがとうございました!

 

福本さんにお話しいただいたプログラムの数々は、自分もこんな教育受けてみたかった…!と心底思うほどどれも面白そうでした。

今回お話を伺った福本理恵さんは、5/13(日)の第15回東大卒業生と語る会・食企画に参加されます!

福本さんに直接お話を聞いてみたい方はぜひお越しください。

 

□企画概要

【日時】2018年5月13日(日)14時〜17時

【場所】東京大学駒場キャンパス 21KOMCEE WEST

※参加無料・服装自由・途中入退場自由 

詳細・お申し込みはこちら


同じく、本企画にお越し下さる株式会社コンプの鈴木優太様にもインタビューをさせていただきました!こちらからどうぞ